2003年9月4日、日本社会教育学会は創立50周年記念国際シンポジウム「社会教育と持続可能な発展-グローバル化するアジア地域における課題と可能性」を日本青年館で開催した。
日本社会教育学会は、「人びとのくらしを拓く学びをつくる」ことをめざし、社会教育の実践を豊かにする理論研究に取り組んできた学会で、今年で50周年を迎える。
基調提案として前平泰志氏(京都大学)が日本の社会教育におけるアジアの位置づけを省みて、現在のグローバリゼーションのもとでの社会教育の在り方を示した。
また、グローバリゼーションにおける持続可能な発展の中で、これからのアジア発の社会教育の意味を提示した。特に、社会教育におけるNGO・NPOとの連携、地域通貨などとの位置づけがなされ、それらを踏まえて、コミュニティとの関係を重視した社会教育のビジョンを示した。
記念講演では、ウザ・ドゥアンサー氏(タイ・チェンマイ大学、アジア南太平洋成人教育協議会会長)が、アジア南太平洋成人教育協議会の実践とHIV問題を提起し、社会教育がコミュニティやNGO等との連携を図り、「教育」から「学習」に向かうことを提言した。
パネル討論では韓国の金信一氏 (ソウル大学)、中国の韓民氏 (国家教育発展研究センター)、タイのウサ・ドゥアンサー氏 (チェンマイ大学)、日本の佐藤一子氏 (東京大学)が各国の現状とこれからの社会教育について報告した。
自由討論では、まず国内の指定討論者の発表が行われた。この中で、今まで省みられることの無かった「川崎市における在日韓国・朝鮮人の社会教育」の実践例が発表され、国際連携とは異なる内なるアジアの問題が提起された。
その後、アジアの意味や位置づけに関する論議やグローバリズムと国家の壁、地方分権等の議論が展開されたが、最後に金信一氏がまとめるような形で「(これからは)コミュニティから始めよう」という提言がなされた。
このシンポジウムでは、グローバル化するアジア地域での国益・国家の社会教育ではなく、コミュニティ・地域との関係を重視した共益の社会教育と、アジアでの新しい連携という、これからのビジョンを提示したといえる。
そして、本年2月に開かれたアジアの都市連携会議シティネット2003「パートナーシップで築く国際協力~持続可能な都市づくりを目指して~“Building Partnerships for Sustainable Cities」でも、政府間で行われる国際協力ではなく、民際協力(民間国際交流・協力)でもない、コミュニティ・地域同士の持続可能な都市づくり連携とNGO・NPOとのパートナーシップ・協働がテーマであった。
今後、持続可能な発展や持続可能な都市づくりのための社会教育において、コミュニティとNGO・NPOの果たす役割はますます大きくなるだろう。
初出 2003/09/20 インターネット新聞『JanJan』