2003年8月2日から3日まで東京都豊島区の立教大学で第21回開発教育全国研究集会(主催・特定非営利活動法人 開発教育協会)が開かれた。
開発教育とは「私たちひとりひとりが、開発をめぐるさまざまな問題を理解し、望ましい開発のあり方を考え、共に生きることのできる公正な地球社会づくりに参加することをねらいとした教育活動」である。(開発教育協会)
今回は「平和を築く学び-世界の『現実』と開発教育」をテーマに、緒方貞子氏の特別基調講演「難民救援・紛争解決と教育への期待」を始めとしたネパールのカマル・フヤル氏など国内外の人々による各種講演、ワークショップ、入門セミナーや各種教材の紹介が行われた。
集会はこのように多彩なプログラムで構成されていたが、ここではマスメディアと関連した教育に焦点を当てて紹介してみたい。
「開発教育を考える会」の臼井香里氏、天野和広氏は、世界の子どもたちの「普通の生活」を紹介するためのCD-ROM「地球の仲間たち」を使った教育を紹介した。この教材は、青年海外協力隊の経験がある教師たちの手によるもの。現地で見た現実とは異なる報道がなされていることに疑問を持った教師たちが、現役協力隊員等の協力を得て何回も改良を続けて作り上げた。マスメディアが伝えない事実を伝えるものとなっている。
「グローバル・エクスプレスタスクチーム」の小山紳一郎氏、米井慎一氏は、教材「グローバル・エクプレス」を使ったメディアリテラシー教育のワークショップを行った。イラク戦争の報道を例に、インディペンデントジャーナリストであるアジア・プレス代表の野中章弘氏を講師にマスメディアの現実の伝え方とその批判的な読み解きが行われた。
「持続可能な地域開発におけるICTリテラシー」と題された会合では、地域情報研究所(NGO)が「平和を築く学び」の実例としてアフガニスタン、イラクと日本の高校生同士の衛星通信を使った「対話のプロジェクト」などを報告した。
いずれも、熱心に討議がなされた。教師や市民、NGO、ジャーナリストらが協働して、マスメディアの問題を取り上げ、平和のためのリテラシー教育に真剣に取り組んだことは非常に重要なことである。マスメディアもこれらの問題提起を真剣に受け止める必要があるのではないか。
初出 2003/08/11 インターネット新聞『JanJan』